こんばんは
鍛治本です。
劇団ノーミーツ「むこうのくに」が終幕して今日で4日たちました。
他の仕事をしながらも、なんだかぼーっとしてしまいあっというまに1日が終わっていくような気がしていかんいかんと思いながら、それと同時に少し冷静に振り返りもできる状態でもあるので、忘れないうちに稽古本番で気づいたことを書き留めておこうと思います。
今回は、ZOOMを使ってのお芝居で感じたこと、やっていくうちに起こった変化について、役者としての技術面で書きたいと思います。
一番最初に気になったのは、やっぱりタイムラグで、自分のところに相手の音が聞こえてからそれに合わせてリアクションして芝居をしていると、結果お互いのタイムラグが加算されて、とてもモッタリした芝居になり、全体のリズムが作りづらい。
なので、最初は相手のセリフが終わるか終わらないかで、次の自分のセリフを出すことで、そのラグを埋めようとしていた。
でも、これでは、どうにも気持ち悪い。
相手のセリフがあって初めて次の自分のセリフが生まれるはずなのに、タイミングだけを気にして先出しするのは、やはりしっくりこない。
しかし、段々と稽古を重ねてくると、先出しを意識しなくとも、少し間合いを機にするだけで、ラグによるストレスを感じなくなっていった。
考えれば、普通の会話でも、相手が喋ってる途中で割り込んでくるやつ、言いたくなるシチュエーション、たっぷり返答までに時間を使う場合、と返答スピードは様々。
それに、オフラインなら感じやすい、相手の呼吸や間合いの情報が少ない分、相手の声やスピードに敏感になり、いつもより自ずと反応スピードは上がっていった。
なので、結果として全体のラグも短くなっていったんじゃないかと思う。
ラグにある程度慣れて、違和感なく、芝居的にも嘘をつかず間を詰められるようになった頃から、思い始めていたことがあった。
それは、ラグはラグのまま受け入れてもいいんじゃないか、ということ。
僕たちは、画面上だけのスムーズなやり取りをお芝居として見せているんじゃなくて、インターネット回線上での会議アプリを使った人間同士のやり取りを見せているわけで、生身の人間として存在しているのは、あくまで画面の外にいるラグを感じている我々だ。
ということは、ラグがありながらコミュニケーションをとっている状態、そしてそれに戸惑うなら戸惑っている状態が、あくまでも生身の人間としての真実なわけで、それを完全になくしてしまうことは、ないんじゃないかと考え始めた。
もちろん、芝居の種類にもよるし、そもそも今回の「むこうのくに」で僕がやっていたバトラーという役は、限りなく画面内に存在している自分を本当の自分として捉えているから、画面内でのやり取りのスムーズさにはこだわっていると思う。
それでも、あくまで、生配信で、生身の人間が演じている以上、リアルなものを利用しないのはあまりにももったいない。
ラグから生まれるストレスも立派な舞台装置の一つなんじゃないか。
今回の「むこうのくに」では、ZOOM画面をそのままお客さんにお見せするのではなく、OBSというシステムを使って、別画面で配信されていた。
なので、本来のZOOMで生じるラグだけでなく、配信画面でもラグが起こる。
かつ、各々の通信状況によって、画像が先で音が遅れている人や、その逆、音が先行で聞こえて画像が遅れる、といった違いが生じていた。
それを、リアルタイムで、スタッフさんが調節してくれていた。
そうなると、役者の組み合わせや、場面によって、ラグの具合は変わってくるし、実際の芝居よりも配信画面は遅れているので、僕らがリアルタイムでそれを確かめるのは難しい。
そうなってくると、あまり音でラグを埋めにいくのは得策じゃない。
画像先行型と音先行型どちらに合わせて調整が行われるかわからないからだ。
下手をすると、ラグで空白があるだろうと思って、早出したセリフが邪魔になってしまうことも考えられる。
なので、本番に入って方針を変えた。
タイトルの通りなんですが、声で邪魔しないように、かつラグが空いていた時の、無駄な空白を少しでも自然な形で埋めるには、と考えて、相手役が喋っている間に、次のセリフをいう動機になりうるものを、少し早いタイミングで見つけて、それに対するリアクションを身体で取り始めるというもの。
人は、何も言葉(音)だけでやり取りしているわけではなく、ちょっとした動きや呼吸、視線、瞳孔の開き具合、顔色、といろんな情報を取り込んでコミュニケーションをとっている。
なので、もしラグがあったとしても、前のセリフに反応して身体が次のコミュニケーションに向かう準備をしていれば、それを見ている人も、やり取りが途切れず連続しているように(無意識に)解釈してくれる可能性が高くなる。
これが最終的に、僕が本番でラグ対策としてやっていたこと。
ラグの話だけで長くなったので、他に技術的に気をつけていたことは、次のブログで。