こんばんは鍛治本です。
『トルネイド/北条雷太の終わらない旅』
無事に全日程を終了することが出来ました。
大阪、新潟、東京、各劇場でご来場くださった皆さん、気にかけてくださった皆さん、ありがとうございました!
あんまり、普段作品の振り返りみたいなことはしないし、観てもらったものが全てなので自分がどんなことを思ってやっていたかを話すのは得意じゃないのですが、劇団の40周年の記念公演の締めくくりだし、本当に忙しかった下半期(半年で5本もやった!)でもあるので、少しだけ。
【北条雷太について】
言わずとしれた劇団の大先輩、西川浩幸さんがやられていた役。
意識しなかったといったら嘘になるのかな、と今、思い返してみると、稽古しながら実はあんまりそこについて意識することはなかったです。
前提として、西川さんのようにはできません。
北条雷太は印象深い人物、キャラクターですが、着ぐるみではありません。
中に入るのではなく、僕は僕の生身を使ってやるしかないというのが1番大きな理由でした。
周りのキャストも違うし、上演している時代も、劇中の時代も違います。
とにかく台本に書いてある状況に身を置いて、目の前の人たちと交流することだけをやっていった結果が今回のトルネイドだし、今回の北条雷太でした。
お客さんの中には、きっと、これは見たい雷太じゃないんだよなぁと思われた方もいただろうなぁと思います。それは申し訳ないです。
でも、あれが僕が最大限出来ることで、今の劇団が目一杯面白いものを作ろうとした結晶なので、自信を持ってやりました。
ただ、いち役者としてはそうなのですが、いち劇団員としてはそうじゃなくて、僕が北条雷太をやることで、かつて出会った北条雷太に再会してほしいし、西川さんの北条雷太のことにも思いを馳せてほしい、という勝手な想いがあって、その目的の為にやろうとしたこと、懐に収めていた方針みたいなものもありました。具体的にどこをどうしたかは、秘密です。
それが成功したかどうかは、お客さんそれぞれに委ねます。僕の劇団員としてのただのわがままなので、結果はそんなに気にしません。
ここからは共演者のことも(全員は書けませんが)
【陣八と騎一郎】
運命を共にした相棒2人(ダブルキャストなので3人)
今回は、年齢差とかをあんまり感じさせない印象だといいなぁとなんとなく思っていました。
もちろん、設定年齢には差があるし、関係性、パワーバランスの上下はあるんですが、雷太が突出した二等辺三角形というより、もう少し、正三角形に近い関係性だといいなと思ってました。
結果3人とやれてとっても楽しかった。
陣八をやってくれた関根翔太は、今の劇団では直の男の後輩で、もう立派にメインをはれる役者。
本人とそんな話はしてませんが、ずっと頼りになるなぁと思ってました。
稽古場でも本番でも3人のバランスを取ってくれていたのはセッキーでした。
主役だけじゃなくてそんなことも出来るようになったのか、と偉そうな感想を持ったもんです。ありがとね、セッキー。とっても助かった。
騎一郎2人、田中騎一郎は、今回の舞台上のアクションを全部考えてくれて、ずっと修正もしてくれて、本当に頼もしかった。
そして本人が持つ人懐っこさが役にも反映されて、とっても魅力的な人物になってたなぁ。
ただ、自分でセリフを変えた笑わせ所でウケた時に、お客さんの方をチラ見してニヤニヤするのはやめてくれ。
安田騎一郎は、本公演初舞台。
でも出番が多いし、ガンガンくる男2人に対抗しなきゃいけない。
本当に真面目で勉強家で、たくさんの質問をしてきてくれて、それがそのまま騎一郎の、真面目で勉強家で、それでもってちょっと視野が狭い性格に反映されて、とってもよかった。初舞台おめでとう!
【ヒカリ】
ヒカリをやってくれた南澤さくらちゃんも、稽古が始まった時は役の大きさに対するプレッシャーで押しつぶされそうな顔をしていたけど、本当に本当にめちゃくちゃ頑張って食らいついて、振り落とされそうになっても、這い上がって頑張ってた。
その結果がちゃんと舞台上に出ていたし、お客さんにも十分伝わっていたと思います。
役者の魅力は技術だけではありません。
もちろん技術があるにこしたことはないし、さくらちゃんが技術が足りないって言いたいわけでもありません。
どれだけ覚悟を持って役と並走しているのか、そこに僕は魅力を感じてしまうのです。
北条おじさんは、ただじっと見てたぞ。
本当によく頑張った。
【ナオさん、そして貴ちゃん】
ナオを演じた林の貴ちゃんとは、近年、ペアとなる役を演じることが多い。
その度に稽古場でも劇場でもたくさんコミュニケーションをとってきた。
2人とも、そういう話をするのが好きだし、演技以外の時間で、どういう方針でやっているのかとか、台本に書かれていないけど共有するべきことなんかを交換しておくと、プラスになると信じているから。
でも、今回は全くそれをやらなかった。
稽古場でも劇場でも、ほとんど喋ってない。
お芝居についての方針を話したり、ここで本当はこう思ってる、みたいなことを一切話さなかった。貴ちゃんから話しかけられることもなかった。
なんだか、そうする必要がなかった。
舞台上に立って、相手の目を見たら、もう雷太とナオでしかなくなった。
でもそれは、今までの公演で丁寧に言葉を交換してきたからだし、本当に信頼できていたから。
ナオが貴ちゃんでよかったと心から思う。
ありがとう。
少しだけ、といいながら、めちゃくちゃ長文になってしまいました。
すみません。
【最後に】
40周年ということもあって、色んなお客さんに声をかけて頂いたり、お手紙を頂いたりしました。
カーテンコールでの拍手やみなさんの表情でも、それをひしひしと感じました。
なかなか劇場に行けなかったりすることを申し訳なく思っていたりする方もいらっしゃるかもしれません。
でも、そんなことはありません。
みなさんが思っている以上に、僕たちはみなさんのことを憶えていますし、皆さんのことを日夜思い出しています。
新人の何も出来ない時代に、劇団のSNSでとっても応援してくださっていた方がいました。
その方が今も観劇を続けているかは分かりません。でも、元気にされてるかなと、今だに考えます。
生活環境が変わって、ライフステージが変化して劇場に行けないけど、と近況をお知らせしてくれるお手紙を頂いたりするのも、めちゃくちゃ嬉しいのです。
ずっと皆さんと並走できたらなと思います。
劇団も自分自身も、そして皆さんも、一年先、なんだったら明日、どうなってるのかは誰にも分かりません。
だから軽はずみなことを言っちゃいけないとは思うのですが、でもだからこそ、約束出来たらなと思うのです。
大先輩の言葉を拝借して終わります。
思い出したらまた会いに来てください。
僕たちはいつでもここにいます。

(トップ写真撮影:河西沙織)

